膝の痛み

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症例:内側半月板後根(後節)損傷 MMPRT

MRIが東京では簡単に撮影できるようになり、変形性膝関節症の進行予防に大いに役立っていると言われています。進行予防だけでなく、徒手療法への活用にも役立ちますので少しご紹介したいと思います。
 
上記に紹介している膝のMRIは変形性膝関節症の原因の1つとして指摘されている、「内側半月板後根(後節)損傷MMPRT」の一症例です。
 
膝関節の方面のCOR画像(前額面)ですが、内側半月板の水平断裂が見られます。
 
この症例では、ロッキング現象と言われる半月板が引っかかって膝がロックしてしまう症状が見られなかったため内側と外側の筋群の緊張の差を調整することで痛みなく動けるように回復しました。

症例:半月板の逸脱

半月板hoop機能(荷重ストレスの分散)の破綻が急激な変形性膝関節症の進行の一因とされています。
 
軸方向の機械的ストレスの約70%が半月板を介して分散されていることを考えれば、半月板の損傷や逸脱によって変形性膝関節症に発展することは想像ができるでしょう。
 
 内側半月板の前角と後角は、関節包や靭帯と連続しつつ、骨へ強固に付着しています。この骨への付着部は、半月板が関節にかかる荷重を分散する際の固定点として機能し、適切な位置で半月板が荷重を受けることを可能にします。特に、内側半月板の後根部の付着は、関節の荷重負荷に対抗するための重要な要素です。
 
半膜様筋が関節包に付着し、その関節包の張力に関与しているため、内側半月板の逸脱に関してのターゲットは「膝関節のアライメント調整」と「半膜様筋の促通」です。
 

症例:脛骨の外方不安定による内側半月板損傷

脛骨の外方不安定は、前十字靭帯の機能不全があると起こります。
この方は、幸い前十字靭帯の断裂はないため、脛骨の前方可動性を作ることで、前十字靭帯の聴力が戻り、脛骨の外方不安定と共に内側の痛みも解消しました。

半月板のroot tear(後根の断裂)に対して、以前は、一般的に半月板切除術を行なってきましたが、2016年にEuropean Society of Sports Traumatology, Knee Surgery & Arthroscopy コンセンサスで理学療法や偽処置と半月板部分切除の成績が変わりないことが報告されています。

"Surgical Management of Degenerative Meniscus Lesions: The 2016 ESSKA Meniscus Consensus"

膝蓋大腿関節障害

膝のお皿(膝蓋骨)と大腿骨の関節での障害は、広く言えばジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)やランナーズニー(腸脛靭帯炎)も入るでしょう。今紹介した2つは股関節の問題も見ていく必要がありますが、このページでは膝の局所的問題についてのみ説明します。
 
実際の患者さんのMRIですが、膝のお皿と太ももの間の軟骨に炎症が起きています。
 
画像上部の黄色の線の方に膝のお皿が寄って大腿骨の内側顆にぶつかってきています。
 
その下の2枚の画像は内側顆と外側顆のSAG画像(矢状面)で確認すると緑で記したの大腿骨に対して黄色の脛骨内側顆が後にズレており、膝蓋骨までの距離が増すことで膝のお皿を後方へと圧迫させてしまっています。
 
この状態は脛骨の内旋をしている状態ですので、脛骨の外旋可動性を作ることで痛みが取れました。

膝関節の特殊な構造と機能

Specific Function of Knee Joint

構造医学の考え方は仙腸関節や腰痛などでも理解することができます

膝関節の内側と外側の構造的違い

 関節の構造はそれぞれについて覚えていないといけないため、多くの方がその勉強を諦めてしまいがちです。
 しかし足関節や手関節と同様、この構造の違いを知っているかどうかが治療結果に大きく影響を与える関節の一つです。
 
 膝関節の内側は大きな円の大腿骨に対して、脛骨の内側の関節面はくぼんだ形をしています。そのため脛骨は転がるようにして大腿骨の関節面を転がります。
この構造によって、内側は足関節側が膝関節側よりも速く大きく動く必要があるため足関節の緊張の影響を受けやすくなっています。
 外側はというと、大腿骨の関節面は小さな円の形となっており、脛骨の外側の関節面は比較的平らの形状です。そのため前後にスライド(並進)する動きで膝の曲げ伸ばしを行なっています。
こちらの方が関節が浅く接することで自由度が高くなっていますが、大腿二頭筋などの膝の外側に付着する筋肉の影響で脛骨もろとも後方(もしくは前方)に大きく引き付ける可能性が出てきます。
 
 当院では、外側と内側の構造的違いに合わせて関節モビライゼーションを行なっています、
 

膝蓋骨による大きなテコとその変位による障害

 椅子から立ち上がる際に、膝は90度動きます。しゃがんだ状態からだと120度以上動きます。
 この関節の大きな動きを効率よく行うために、滑車の機能として、人体で最大の種子骨である膝蓋骨(お皿)が存在しています。
  この種子骨は、膝の大きな動きに合わせて位置を移動します。そのため、この位置から問題となっている状態を予測することもできます。
 
 オズグットなどで知られる成長痛などにもこの滑車の機能障害が多いため、学生やスポーツ障害においても重要なチェックポイントとなります。

てこの原理は、身体のどこにでも存在していますが、足底のアーチにも活かされており、動画で説明していますのでこちらもご参照ください
神経による調整として一番重要な部位は、手です。
構造医学と神経学をうまく活用しなくてはいけない部位ですので、こちらも理解の助けになるかもしれません。

膝関節の特殊な神経支配

 この解剖学的特徴は神経機能の調整が必要であることの理由ではあるのですが、神経機能の調整については他のページでもたくさん記載しているので、そこは割愛し、膝関節の治療がなぜ困難を極めるのか、筋肉についても一つ紹介したいと思います。

 肩関節には、肩の伸筋かつ肘の伸筋である上腕三頭筋と、肩の屈筋かつ肘の屈筋である上腕二頭筋は拮抗した関係にあります。肩の機能と肘の機能が入れ替わる筋肉は存在しません。
 しかし膝関節では、縫工筋と四頭筋の違いのように、股関節では屈筋で同じであるが、膝関節においては伸筋である四頭筋と逆の機能である屈筋である縫工筋といったように、股関節と膝関節の機能が逆転している筋肉が存在しています。

 この特徴も膝の治療が思うように行かなくなる理由ではないでしょうか
 
筋収縮の神経メカニズムについてのコラム

仙腸関節とハムストリングス の緊張について

仙腸関節とハムストリングス の緊張について

仙腸関節とハムストリングス

仙腸関節は骨盤の上部にある関節ですが、仙腸関節の状態によって、坐骨結節(座ると座面にあたる骨)の位置は変化します。

ハムストリングスを構成する3つの筋肉は、坐骨結節に付着しており、膝の状態と坐骨の状態によって、3つの筋肉の張力が変化します。

状況によって、「力が入らない」「もも裏がはる」「足がつる」などハムストリングスの障害につながっていきます。
 
詳しくは仙腸関節のコラムでも説明しています

キネマティクス的治療戦略

 関節構造学・筋膜トリガーポイント・神経支配この三種の神器のような技術で痛みの多くは改善できます。
 しかし、記憶された運動パターンに問題がある場合、動くとまた痛みが再燃するなどといった繰り返す痛みに苦しむことが一定数の方でいらっしゃいます。
 
 この部分は運動力学(キネマティクス)と関節機能学を合わせて考えていくことが大切です。
 
 例えば図のように、立ち上がる動作の膝の伸展では、膝関節を形成する大腿骨遠位部も脛骨近位部も後方に移動します。
※この際の骨運動学においての差も重要ですが、かなり難解になるため割愛します。
 この動きとは違い、ボールを蹴るような動作における膝の伸展は、大腿骨が固定され、下腿遠位部が大きく前方に移動し、脛骨近位部は硬いの移動に遅れながら前方に動き、結果膝が伸展されます。
 
 前者は股関節の柔軟性が必要で、後者は足関節の柔軟性が必要になります。
  今ご紹介した2つの膝の伸展の違いは、実際の歩行において両方含まれるため、歩きのタイミングで膝の痛みが変化するのもそういった傾向にあります。
 

股関節・膝関節による膝関節の負荷増大

 膝関節に良いと言われる内転筋のトレーニングや母指球での接地は、本当に膝関節にとって効果的な運動になるとも限りません。
 内転筋のトレーニングも足底の母指球接地のバランストレーニングも目的を間違えると逆に膝のストレスを増大させることにもつながってしまいます。
 
 股関節や足関節は自由度の高い関節のため、トレーニングによって筋肉を賦活させることは非常に重要です。しかし、内転筋や母指球側への重心移動は、膝にとって必ずしも安定したトレーニングとなり得ないのは、図で示したような場合に起こります。
 
 Q角やFTAといった膝の角度(アライメント)が股関節や足関節のトレーニングによって変化する場合があることも考慮しなければなりません。
 

wordpressに投稿している症例報告をご覧になる場合は、
こちらをクリックしてください。

 

他の臨床コラムはこちらからご覧になれます。

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